ネット黎明期に訪れた誰もがその温かみのある世界観に魅了された「みくろぺえじ」ですが、その消滅はあまりにも突然でした。ファンの間で長年議論されてきたみくろぺえじの閉鎖理由について、当時のWeb環境とコミュニティの変遷を振り返ると、単一のトラブルではなく複合的な要因が絡み合っていた実態が浮かび上がってきます。
最大の要因として挙げられるのが、個人運営の許容キャパシティを超えたトラフィックの増大です。2000年代中盤、個人サイトは無料レンタルサーバーや安価なホスティングサービスを利用するのが一般的でした。しかし、魅力的なイラスト作品がネット上の大型掲示板やまとめサイトで拡散されるにつれ、サーバーの転送量制限超過による表示不能(いわゆる鯖落ち)が頻発するようになりました。これに対応するためのインフラ維持費の増大は、非営利で運営していた個人クリエイターにとって小さくない財政的・精神的負担となったのです。
さらに、当時のインターネット社会で深刻化し始めていた無断転載・直リンク問題と掲示板(BBS)の荒らし行為も影を落としました。関係者の証言や当時のWeb日記の断片によると、純粋なファン交流の場であったBBSに心ない中傷や著作権侵害を伴う画像の拡散が持ち込まれ、作者が過度のストレスを抱えていた形跡が確認されています。クリエイター自身の学業修了や就職といった実生活の環境変化が重なった結果、サイトを静かに畳むという選択、すなわち「サイレントディスコン」に至ったのが真相と見られています。