近年のデジタル配信の充実は、相撲ファンの観戦カルチャーに大きな地殻変動をもたらしています。SNSやオンラインコミュニティで交わされる生の声を検証すると、従来の「茶の間で15時半から18時までテレビをつける」スタイルから、明確な分極化が進んでいることが見て取れます。
特に20代から40代の現役世代からは、「平日は仕事で中継を見られないが、帰りの電車で日本相撲協会公式YouTubeの40分動画を倍速再生して1日の流れを把握している」「NHK ONEで推し力士の取組だけを毎日5分でチェックできるのが最高に助かる」といった、いわゆるタイムパフォーマンス(タイパ)を重視した視聴習慣が定着しています。
一方で、往年の好角家からは「土俵入り前の呼び出しさんの美声や、仕切りの緊迫した間合い、北の富士さんのような名物解説者の情緒ある語り口はフル中継でしか味わえない」という意見も根強く存在します。特番インタビューや手記において歴代の名横綱たちが「土俵に上がるまでの静寂と息遣いにこそ相撲の神髄がある」と語るように、結果だけでなく空気感そのものを愛でる文化も健在です。
現代のデジタル配信は、この「効率的な結果確認」と「情緒的なフル観戦」という相反する二つのニーズを完璧に両立させるインフラへと進化を遂げたと言えます。