読者が最も気をもんでいるトピックの一つが、単行本51巻の発売日と、物語がどのような最新話の結末を迎えるのかという点です。
単行本は2018年11月に第50巻が発売されて以降、新章となる『あひるの空 THE DAY』シリーズの第1巻が2019年に刊行されたものの、通算カウントとしての51巻以降は刊行がストップしています。本誌で掲載されたエピソードの単行本未収録分は一定数存在していますが、日向武史氏の意向として、まとまった形での加筆修正やストーリーラインの整合性を完全に整えた上で世に送り出したいという意向が働いていると見られます。
そして、作中で最も読者に衝撃を与え続けているのが、物語の序盤から断片的に提示されている未来のモノローグ(最終回の結末を示唆する伏線)です。
空たちの語りとして描かれた「僕たちの最後のインターハイは、神奈川県予選の一回戦で敗退した」という趣旨の告白は、ジャンプ的な「全国制覇」を目指す少年漫画の常識を根底から覆すものでした。彼らが血のにじむような努力を重ね、部室の再建や不祥事の禊を乗り越えて辿り着く先が、輝かしい栄光ではなく「初戦敗退」という無情な現実である可能性が、あらかじめ読者に提示されているのです。
しかし、日向氏が描こうとしているのは敗北そのものの虚しさではありません。「結果として届かなかったとしても、積み重ねた日々と流した汗、仲間と交わした視線は決して嘘にはならない」という、人生における真の尊厳です。読者は、彼らがどのような過程を経てその結末を受け入れ、次の人生のステージへと踏み出していくのかという「過程の真実」を見届けるために、連載再開を待ち望んでいるのです。