地元で「ガス」と呼ばれる海霧は、単に気候を涼しく保つだけでなく、道東特有の豊かな生態系と湿原環境を支える生命線でもあった。釧路湿原国立公園では、霧がもたらす微細な水滴(霧滴)が湿原植物の水分補給において決定的な役割を果たしてきたのだ。
ところが、2026年に入り海霧の発生日数は例年の約半減を記録。直射日光が湿原の泥炭層を長時間温めることで、乾燥化と水温上昇が懸念されている。専門家は「海霧の消失は単なる気温上昇にとどまらず、湿原特有の希少高山植物や動植物の生息域を劇的に破壊する恐れがある」と警告する。大気と海洋が織りなす繊細なバランスの崩壊は、私たちが想像する以上の速さで進んでいる。