なぜこれほど広い地球上で、「ぬ」から始まる独立国が誕生しなかったのでしょうか。その深層には、現地語の発音体系と日本語の音訳ルールという2つの構造的要因が絡み合っています。
第1の要因は、世界の主要言語において国家規模の広域地名の語頭に「Nu」の音韻が採用されにくい点です。英語の「New(ニュー)」やフランス語の「Nouveau(ヌーヴォー)」のように「新しい」を意味する接頭辞は存在しますが、国名レベルでは「ニュージーランド(New Zealand)」のように「ニュ」と表記・発音されるのが通例となっています。
第2の要因は、日本語のカナ転写における表記の収斂です。アフリカや中東、ポリネシアなどの地域言語には「Nu-」で始まる小地名や部族名が存在するものの、国家統合や独立のプロセスにおいてそれらの呼称がそのまま主権国家の正式名称として採用された例がありませんでした。結果として、近代以降の外交地図において「ぬから始まる国」が1国も成立しないまま今日に至っています。