全国の保育現場で「朝の会や導入で歌うと、落ち着かなかった子どもたちが一瞬で集まってくる」と評されるお弁当バスの歌。その魅力の根源は、真珠まりこ 原作によるロングセラー絵本『おべんとうバス』(チャイルド本社刊)の世界観と、耳に心地よい言葉のリフレインが見事に融合している点にあります。
乳幼児期の子どもにとって、お弁当は「大好きな食べ物が詰まった特別な箱」であり、バスは「憧れの乗り物」の代表格です。この2大好物を掛け合わせた舞台設定に加え、歌の中には発達段階に応じた計算し尽くされた仕掛けが組み込まれています。お弁当バスの手遊び歌が人気の理由を認知発達の観点から紐解くと、主に3つの要素が浮かび上がります。
第1に、「名前を呼ばれて返事をする」というコール&レスポンスの心地よさです。「おにぎりさん」「はーい」というシンプルなやり取りは、1〜2歳児が自己の存在を認識し、他者とのコミュニケーションを楽しむ原点となります。保育の現場観察においても、普段は恥ずかしがり屋な園児が、具材になりきって元気に「はーい!」と手を挙げる姿が日常的に確認されています。
第2に、1から10までの数概念(カウンティング)の自然な獲得です。数字を機械的に暗記させるのではなく、バスに乗り込む仲間が増えていくストーリーを通じて、視覚と聴覚、身体動作を連動させながら「数が増える楽しさ」を体感できます。
第3に、オノマトペ(擬音語・擬態語)の心地よさです。「ギュッギュッ」「ちゅっちゅっ」といったリズミカルなフレーズは、言語獲得期にある幼児の調音器官を心地よく刺激し、自発的な発話を促すトリガーとして機能しています。