インターネット上のビジネスマナー論争では、「お粗末様でした=絶対に使ってはいけない失礼な言葉」といった極端な意見が見受けられます。しかし、これは半分正解で半分誤解です。
家庭内で親が子に手料理を出した時や、気の置けない友人に手料理を振る舞った際に「お粗末様でした」と返すのは、昔ながらの親しみやすい日本語として今もごく自然に機能しています。問題となるのは、「上下関係の存在するビジネスシーン」および「ご馳走してもらった側の誤用」に限定されます。
さらに見落とされがちな盲点が、「相手が誤用した時にどう振る舞うか」という点です。もし部下や後輩が、食事をご馳走した後に悪気なく「お粗末様でした!」と言ってきた場合、その場ですぐに「その使い方は間違っているぞ」と頭ごなしに注意するのはスマートではありません。食事の余韻が台無しになり、相手を過度に萎縮させてしまいます。
一流のビジネスパーソンは、その場では「美味しかったね、また来よう」と笑顔で受け流し、後日別の機会やオフィスの1on1などで「そういえば、あの時の返答は別の言葉を使うとビジネスではもっと良くなるよ」と優しく教え導きます。マナーの知識を相手を攻撃する武器にするのではなく、相手の失敗を包み込む教養として使うことこそが真の大人の所作です。