「grave」は英語圏では日常的に使うが、日本人が考える「お墓」より範囲が狭い。例えば英語の辞書でgraveを引くと「a place in the ground where a dead person is buried」とあり、あくまで地面に埋葬する場所であることが分かる。日本のように火葬した遺骨を墓石の下に納める形式は、英語圏の伝統的な土葬文化とは構造が異なる。
また「cemetery」と「graveyard」の違いも意外と知られていない。歴史的には、教会の敷地内にある小規模な埋葬地がgraveyard、教会から離れた広い公共の埋葬地がcemeteryと区別されてきた。日本の寺の境内墓地は寺院という宗教施設に付属するため、強いて言えばgraveyardに近いが、日本の宗教的背景を踏まえると「temple cemetery」の方が誤解が少ない。このように英語圏の宗教と土地制度に根差した言葉の歴史を知っているかどうかで、訳語の精度が変わる。