日本仏教の主要宗派において、お布施に対する根源的な解釈の違いを理解しておくと、迷いがなくなります。特に浄土真宗と他宗派との間には明確な神学(教義)上の相違が存在します。
浄土真宗(本願寺派・大谷派):「冥加金」としての位置づけ
浄土真宗では、亡くなった人は阿弥陀如来の本願力によって即座に極楽浄土へ往生し成仏している(往生即成仏)と考えます。そのため、故人の冥福を祈る「追善供養」という概念が存在しません。
したがって、お盆のお布施も「故人の霊を慰めるための読経料」ではなく、教えに出会えたことへの感謝として阿弥陀如来(本尊)へ捧げる「冥加金(みょうがきん)」という意味を持ちます。表書きは他宗派同様「御布施」で問題ありませんが、名目として「読経料」「供養料」「戒名料」といった言葉を用いるのは教義上明確にタブーとされます。
曹洞宗・臨済宗(禅宗):棚経と施餓鬼(せがき)の布施
禅宗のお盆では、先祖供養の「棚経」と同時に、無縁仏やあらゆる生命に施しを行う「施餓鬼会(せがきえ)」が大規模に勤められます。寺院によっては、お盆のお布施とは別に「施餓鬼料」や「御塔婆料」を個別の袋で納める慣例があります。案内状に「施餓鬼料:〇千円」と記載されている場合は、その指示に従って別包みで準備します。
真言宗・天台宗(密教系)および日蓮宗
本尊への報恩感謝とともに、先祖の追善回向を重視します。表書きは「御布施」のほか、地域によっては「御回向料(ごえこうりょう)」と記すケースも見られますが、全国共通で最も失礼がないのは汎用性の高い「御布施」の表記です。