正月三が日に振る舞われるお酒をすべて「お屠蘇」と呼ぶ傾向がありますが、これは明確な誤解です。お屠蘇とは、清酒や本みりんをベースに「屠蘇散(屠蘇延命散)」と呼ばれる複数の生薬を浸合させた薬用酒を指します。単に瓶から注いだ日本酒はお屠蘇ではなく、儀礼用の「祝い酒」に過ぎません。
屠蘇散に配合される代表的な生薬には、冬場の体調管理に理にかなった効能が凝縮されています。山椒(サンショウ)は消化を助けて胃腸を温め、細辛(サイシン)や防風(ボウフウ)は発汗を促して風邪の初期症状を予防します。さらに、喉の炎症を鎮める桔梗(キキョウ)や血行を改善する桂皮(ケイヒ・シナモン)、胃の働きを整える白朮(ビャクジュツ)などが絶妙なバランスで調合されています。
漢方薬局の関係者によると、「厳冬期に体を芯から温め、年末年始のご馳走で疲れた胃腸の働きを助けるという、極めて実用的な養生医学の知恵が息づいている」と分析されています。