幼稚園に君臨したあいちゃんは、持ち前の美貌と投げキッス、そして甘美な話術を駆使し、瞬く間にふたば幼稚園の男子たちを虜にしました。しかし、唯一その支配術が完全に通用しなかった人物こそが、主人公・野原しんのすけでした。
投げキッスを繰り出しても「オラ、子供には興味ないから」とななこお姉さんや女子大生に思いを馳せ、自分の誘いを無視してマイペースにチョコビを頬張るしんのすけ。自分の意のままにならない異性に初めて直面したあいちゃんは、強烈なプライドの挫折を味わいます。心理学における「心理的リアクタンス(自由を制限されると逆に執着を強める心理)」と「認知的不協和」が働き、「この私になびかないはずがない」という意地が、いつしか本物の恋心へと変貌を遂げたのです。
それ以来、彼女はしんのすけを「しん様」と呼び、熱烈なアプローチを仕掛けるようになります。計算や駆け引きで生きてきた少女が、計算が一切通用しない究極の自然体であるしんのすけに救われ、真の純愛を見出す構図は、本作の人間ドラマの中でも屈指の深みを持っています。