1976年、志茂田景樹は小説『黄色い妖精』でデビューを果たし、出版業界にその名を一歩踏み出した。鬱屈した下積み時代のエネルギーを吐き出すように執筆に没頭し、独自の世界観を構築していく。当時の大衆文学界において、彼の切り拓くストーリーラインは異彩を放っていた。
そして1980年、ハードボイルド小説の傑作『探偵事務所』で見事に第83回直木三十五賞(日本文学振興会主催)を受賞。長年におよぶ辛酸と下積み生活が報われた瞬間だった。都会の闇と人間の孤独を鮮烈に描いた同作は高く評価され、彼は一気に売れっ子作家の仲間入りを果たした。