ジョージ6世(本名:アルバート・フレデリック・アーサー・ジョージ、愛称「バーティ」)は、1895年にヨーク公(後のジョージ5世)の次男として誕生しました。幼少期から厳格な父の教育、利き手である左利きの強制矯正、脚の矯正具の着用などによる強いストレスを受け、深刻な吃音症(きつおんしょう)を抱えることになります。シャイで控えめな性格だった彼は、自分が王位に就くことなど夢にも思っていませんでした。
ところが1936年、英国王室を揺るがす未曾有の大事件が発生します。父王の崩御に伴い即位した兄エドワード8世が、アメリカ人女性ウォリス・シンプソン夫人との結婚を強行しようとしたのです。当時、離婚歴があり夫も存命だった民間人女性との婚姻は、英国国教会の首長でもある国王として政府・王室・世論から猛反発を受けました。
結果として兄は、即位からわずか325日で退位を選択。いわゆる「王冠を賭けた恋」による電撃退位でした。王室崩壊の危機の中、突如としてスポットライトを浴びせられたのが弟のアルバートでした。王位継承の準備を一切してこなかった彼は、退位の報を聞いた際、母メアリー王妃の前で1時間にわたって泣き崩れたと伝えられています。
崩れかけた王室の信頼を回復するため、彼は偉大な父の名を継いで「ジョージ6世」と名乗り、1937年5月12日にウェストミンスター寺院で戴冠式を執り行いました。国家の重責を背負う覚悟を決めた瞬間でした。