彼の一本背負いは、従来の柔道の常識を覆すものだった。日本体育大学時代に磨き上げられたその技は、相手の懐へ潜り込むスピードと、小柄な体躯を補って余りある独特の立ち軸の使い方が特徴だった。自らの背中に相手を乗せるのではなく、鋭い回転で相手の体勢を空中へ浮かせ、一瞬で支点を変えて畳へ叩きつける。
理詰めのフォームと天性の直感。対戦相手は「来ると分かっていても防げない」と恐怖したという。全盛期の彼は、まさに現代柔道が生んだ最高峰のアーティストであり、その理にかなった技の美しさは国内外の競技者に絶大な影響を与えた。