高校化学の共通テストや私大・国公立二次試験の定番テーマであり、理系必須の常識数値とされているのが「空気の平均分子量=約28.8」です。問題文に数値が与えられていないケースすら珍しくありませんが、この数字は決して天から降ってきた暗記コードではありません。
乾燥空気のおおまかな体積比率は、窒素($\text{N}_2$)が約78%、酸素($\text{O}_2$)が約21%、アルゴン($\text{Ar}$)が約1%で構成されています。一般的な高校化学の試験では、計算を平易にするために「窒素80%(体積比4/5)、酸素20%(体積比1/5)」と近似して扱われる場面が主流です。それぞれの分子量は、窒素の原子量14.0より $\text{N}_2 = 28.0$、酸素の原子量16.0より $\text{O}_2 = 32.0$ となります。
この比率を先ほどのモル分率の公式に代入すると、以下の計算手順になります。
$$M_{\text{air}} = 28.0 \times \frac{4}{5} + 32.0 \times \frac{1}{5} = 22.4 + 6.4 = 28.8$$
窒素の分子量28と酸素の分子量32のちょうど中間である「30」にならないのは、体積比率において分子量が小さい窒素が8割を占めているため、平均値が28寄りに強く引き寄せられているからです。さらに、より精密な実測比率($\text{N}_2: 78\%$、$\text{O}_2: 21\%$、$\text{Ar}: 1\%$、$\text{Ar}$の分子量40)で計算してみても、以下のようになります。
$$M_{\text{air}} = 28.0 \times 0.78 + 32.0 \times 0.21 + 40.0 \times 0.01 = 21.84 + 6.72 + 0.40 = 28.96$$
丸めると約29となりますが、標準的な受験化学では28.8を基準値として展開されます。さらに、気体の密度からの換算公式も重要です。標準状態(0℃、1.013×10⁵ Pa)において、気体1 molの体積は22.4 Lです。したがって、気体の密度を $d \text{ [g/L]}$ と置くと、平均分子量は以下の関係式で瞬時に求められます。
平均分子量 $M = d \times 22.4 \text{ [g/mol]}$
空気の密度は約1.29 g/Lであるため、$1.29 \times 22.4 \approx 28.9$ となり、先ほどの加重平均による計算結果と完全に一致します。この「モル分率からのアプローチ」と「状態量・密度からのアプローチ」の双方向から数値を検証できるようにしておくことが、計算ミスを防ぐ最大の防御策となります。