平手友梨奈という表現者の「今」を正しく理解するためには、彼女が10代で経験した壮絶な環境と、心身に刻まれた傷跡に目を向ける必要があります。
2015年に14歳で欅坂46の1期生オーディションに合格し、翌年『サイレントマジョリティー』でデビューして以来、すべてのシングル表題曲でセンターを務めた平手。そのプレッシャーは想像を絶するものでした。ライブ中の過呼吸やステージからの落下事故、腕の負傷など、度重なる満身創痍の姿は当時のファンの記憶に焼き付いています。
とりわけ決定的な影を落としたのが、2017年6月24日に幕張メッセで行われた欅坂46全国握手会での発炎筒事件です。平手友梨奈と柿崎芽実が参加していた第1レーンにおいて、刃渡り12cmのナイフを所持した男が発炎筒を焚き、現行犯逮捕されるという凶行が発生しました。当時まだ15歳だった多感な少女が至近距離で直面した生命の危機と恐怖は、計り知れないトラウマを残しました。
2026年1月、平手はグループを「卒業」ではなく「脱退」という極めて異例の言葉を選んで去りました。この選択について、当時の特番インタビューやラジオの肉声で語られた「言葉のニュアンスに嘘をつきたくない」という告白は、集団の論理や予定調和に迎合せず、自らの心に誠実であり続けようとした彼女の痛切な決意の表れでした。