平田満のキャリアをビジュアル面から辿る際、誰もがまず思い起こすのが1982年公開の映画『蒲田行進曲』(深作欣二監督)における「ヤス」の姿です。ボサボサのパーマヘアに、時代劇の稽古着や薄汚れたシャツをまとい、スター俳優・銀四郎(風間杜夫)を見上げる狂気と忠誠心が入り混じった眼差し。クライマックスの39段の階段落ちで見せた、血と汗に塗れた表情の写真は、40年以上が経過した現在も日本映画の象徴的なスチールとして語り継がれています。
当時の写真に焼き付けられているのは、劇団つかこうへい事務所の旗揚げメンバーとして培われた、全身から噴き出すようなエネルギーです。小柄な身体を極限まで酷使し、悲哀を叫びへと昇華させる青年の鋭利な姿は、当時の演劇ファンや映画ファンに鮮烈な衝撃を与えました。
対して、40代から50代にかけての写真を見ると、かつてのギラつきは柔らかな包容力へと変化を遂げています。数多くのホームドラマやサスペンスドラマで「朴訥で誠実な父親」「どこか哀愁を漂わせる刑事や町工場の社長」を演じるようになり、穏やかな笑顔の中に人生の陰影を滲ませる風貌が定着していきました。
そして70代を迎えた現在、メディアのインタビューや舞台のアフタートークに登場する平田満の姿は、見事なロマンスグレーの髪と髭が調和した、洗練されたダンディズムを漂わせています。無理な若作りに走ることなく、顔に刻まれた一本一本の皺を表現者の深みとして受け入れている佇まいからは、半世紀にわたり第一線で役と向き合ってきた表現者ならではの静かな風格が伝わってきます。