プール熱の正式な医学的診断名は咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)であり、感染症法において「小児科定点把握対象(5類感染症)」に指定されているアデノウイルス感染症の代表格です。主にアデノウイルス3型や4型、7型などの遺伝子型が引き起こす急性の感染症として知られています。
「プール熱」という通称が定着した背景には、昭和から平成初期にかけて、学校等のプール水に含まれるウイルスが結膜や咽頭粘膜を介して集団感染を引き起こした歴史があります。しかし、現代の公共施設や学校プールでは徹底した塩素消毒基準(遊離残留塩素濃度0.4mg/L以上)が義務化されたため、プール水そのものからの直接感染は劇的に減少しました。にもかかわらず患者数が減らない最大の理由は、プール以外の日常環境における飛沫感染および接触感染が主流となっているためです。
アデノウイルスは、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスとは異なり、「エンベロープ」と呼ばれる脂質膜を持たないノンエンベロープウイルスに分類されます。この構造的特徴により、一般的なエタノール消毒液に対して強い耐性を持ち、乾燥や胃酸、温度変化にも非常に頑丈です。机やドアノブ、タオルの表面で数日から数週間にわたって感染性を保ち続ける生命力こそが、この感染症の根絶を難しくさせている根本原因です。