多くの目撃証言や写真・映像資料が残されている一方で、科学者や水産生物の専門家たちによる正体解明の調査も精力的に進められました。池田湖は水深約233メートルという九州屈指の深さを誇るカルデラ湖であり、その独特な生態系が多様な仮説を生み出す土壌となったのです。
最も有力視された仮説が、池田湖に生息する「オオウナギ説」です。池田湖のオオウナギは国の天然記念物に指定されており、成長すると体長2メートル、胴回り30センチメートル以上、体重20キログラム近くに達する巨大な個体が存在します。しかし、単体のウナギでは目撃された「体長5メートル〜10メートル」というスケールを説明しきれません。そのため、複数のオオウナギが繁殖行動などで連なって泳いでいた姿が、巨大な単一生物に見えたのではないかという見解が有力視されました。
もう一つの現実的な候補として浮上したのが「大型チョウザメ説」です。1960年代から1970年代にかけて、池田湖周辺では養殖実験を目的としてチョウザメが導入され、一部の個体が湖に逃げ出した記録が残っています。チョウザメは成長すると体長2〜3メートルを超え、背面に硬い鱗の隆起(側線鱗)を持つため、水面に背中を出して泳ぐと複数の突起物のように見える特徴があります。この生態的特徴が、目撃証言と極めて合致していると指摘されました。
さらに、カルデラ湖特有の物理現象である「波浪の干渉」や「湖底からのメタンガス噴出による気泡の連鎖」、ボートの航跡波が遠方で増幅されて生物のように見誤られたとする「光学的錯覚説」も提示されています。決定的な捕獲例がないまま現在に至るものの、自然現象と大型水棲生物の複合的な要因がイッシー伝説を形作ったというのが客観的な見方です。