叶井俊太郎という人物を語る上で、映画会社トランスフォーマー時代に手掛けた『アメリ』(2001年)の大ヒットは外せない。誰もが見向きもしなかったフランスの単館系作品を、独自の宣伝手法と鋭利なコピーライティングで興行収入数十億円規模の社会現象へと押し上げた。小劇場系の枠を超え、渋谷系カルチャーや若い女性層を巻き込んだ一大ムーブメントは、当時の映画配給ビジネスのルールを根底から書き換えた。
だが、栄光の頂点に立った直後、彼は突如として転落の渦へと飛び込んでいく。自ら設立したトルネード・フィルムでは、自身の好む尖った作品を次々と買い付けたものの、巨額の負債を抱えて破産宣告を受けることとなった。「数億円の借金なんて、死ぬわけじゃないからどうってことない」――そう豪語してのけた彼の奔放さは、借金取りに追われながらもどこか飄々としており、関係者を呆れさせると同時に惹きつけてやまなかった。
ジェットコースターのような浮き沈み。常人なら一度の挫折で退場するような修羅場を、彼は笑いながら何度もくぐり抜けてみせた。