歌舞伎界における最大のビッグニュースとなったのが、息子・五代目尾上菊之助による「八代目尾上菊五郎」の襲名です。菊五郎の名跡は、幕末から明治にかけて近代歌舞伎の基礎を築いた「五代目菊五郎」、六代目、七代目と受け継がれてきた江戸歌舞伎の最高峰です。
この襲名において特筆すべきは、七代目菊五郎の卓越した決断力と後進への深い愛情です。一般的な名跡継承では、先代が隠居名を名乗るか物故後に襲名が行われるケースが多い中、七代目は健在のまま長男に大名跡を譲り渡し、自身も同じ看板を背負いながら後見役として芸の伝承を盤石にする道を選びました。
松竹や興行関係者の取材によると、この世代交代の狙いは「音羽屋の芸の確立」と「歌舞伎界全体の活性化」にあります。古典の継承はもちろん、新作歌舞伎の創造にも果敢に挑んできた菊之助が八代目を名乗ることで、観客層の世代交代と新たな歌舞伎ファン開拓を一気に加速させる戦略的布石となっています。