この事件が日本犯罪史において特異な位置を占める最大の要因は、関根元が嘯いていた「ボディを透明にする」という隠滅工作の異様さにあります。関根は「死体があるから事件になる。死体を透明にしてしまえば警察も立件できない」という歪んだ確信のもと、極めて組織的かつ冷酷な遺体損壊を行いました。
犯行に使用された凶器は、犬の安楽死用として不正に入手していた硝酸ストリキニーネでした。「犬の病気予防の栄養剤だ」と偽ってカプセルを飲ませ、数分以内に激しい痙攣を伴わせる形で絶命させています。
殺害後、関根らは遺体を群馬県片品村にある知人の山小屋や所有地、風呂場へと運び込みました。そこで行われた損壊作業は以下の徹底したプロセスに分かれていました。
- 肉と骨の解体:遺体を刃物で骨と肉に削ぎ落とし、肉部分は数センチ四方のサイコロ状に細かく刻む。
- 河川への流出:細分化された肉片や内臓はビニール袋に詰められ、人目につかない山間部の渓流へ小分けにして流された。
- 骨の完全焼却:残された骨はドラム缶に入れられ、灯油や木炭を用いて灰になるまで長時間かけて焼き尽くされた。
- 灰の散布と所持品処理:粉状に砕かれた骨の灰は山林に広く散布され、被害者の衣類や所持品、時計なども完全に焼き払われた。
この徹底的な隠滅により、警察の懸命な捜索にもかかわらず、4名の遺体は原形をとどめた状態では一切発見されませんでした。これが当時「遺体なき殺人」と呼ばれ、自白の信用性や状況証拠の積み上げが裁判の最大の焦点となった理由です。
捜査本部は、共犯者として遺体損壊に関与したペットブリーダー・山崎永幸の供述をもとに現場検証を重ね、片品村の河川敷や山林からわずかに残された微細な人骨片、被害者の身の回り品の燃え残り、そして毒物の購入ルートを特定。執念の物証集めによって、直接の死体が存在しない状態での起訴・有罪判決へと持ち込みました。