朱色の柱がどこまでも続く千本鳥居。その美しさに誰もが目を奪われるが、この山の歴史ははるか古代にまで遡る。和銅4年(711年)、豪族である秦伊呂具が餅を標的にして矢を射たところ、その餅が白い鳥となって飛び立ち、山の峰に降り立った。そこに稲が生じたことから社が創建されたという伝承が今も残る。
山中に張り巡らされた参道を進むと、単なる神社建築の域を超えた巨石信仰や、山そのものを神体とみなす古代信仰の痕跡がそこかしこに残されている。ネット上の一般的な旅行情報では語られない神仏習合の複雑な残り香。歴史・文化ガイドの手引書を紐解けば、稲荷山が単なる写真映えスポットではなく、祈りと信仰が千年以上かけて重なり合った層状の聖地であることが理解できるだろう。