親学のイデオロギーが最も色濃く反映された政策目標が、国による家庭教育支援法の制定運動および地方自治体での家庭教育支援条例の制定です。これらは「家庭教育は私的事項ではなく公的に支援・指導すべき領域である」との思想に基づいています。これまでに指摘されている問題点は、主に次の4点に集約されます。
第一に、母親への過剰な責任転嫁と負担集中です。子どもの問題行動や不適応の責任をすべて家庭内の愛情不足に帰結させるため、ワンオペ育児や仕事と子育ての両立に悩む母親を心理的に追い詰める構造を持ちます。
第二に、医学的根拠の欠如と差別助長です。発達障害をはじめとする医学的事象を精神論や道徳論にすり替えることで、偏見を再生産するリスクがあります。
第三に、公権力による私的領域への過剰介入です。どのような価値観で子どもを育てるかは憲法で保障された個人の自由であるにもかかわらず、行政が特定の家族モデルを押し付ける危険性を孕んでいます。
第四に、社会構造的問題の隠蔽です。子どもの貧困や教育格差、雇用不安といった構造的課題の解決を後回しにし、個々の家庭の「親力」という精神論に矮小化させてしまいます。