近年、宮内庁書陵部が所蔵する古写本や『令集解』などの注釈書の再解読が進み、歴史学・学術出版業界では大宝律令の評価を根底から見直す学説が活況を呈している。かつては唐の永徽律令をほぼ直輸入したと見なされていた条文の随所に、周到な改変が加えられていた事実が浮き彫りになってきた。
特に注目されているのは、神祇令の独立や、天皇の代替わりに伴う儀礼規定の特殊性である。中国の律令が易姓革命(王朝交代)を前提としていたのに対し、日本の律令は「万世一系」の理念を護持するため、徹底して王朝の断絶を排除する法理を組み込んでいた。近年の学術書に掲載された新出史料の分析データは、大宝律令が極めて自覚的かつ戦略的に造られた「国家主権の防衛宣言」であったことを雄弁に物語っている。