従来のボス猿像といえば、激しい威嚇と圧倒的な腕力でライバルをねじ伏せる暴君のイメージが根強い。しかし、ベンツの統治スタイルはそれとは対極に位置していた。彼が最も重きを置いたのは、群れの秩序維持と弱者の保護である。
小猿同士の喧嘩が起きれば即座に割って入り、どちらか一方を理不尽に罰することなく争いを収める。メスや幼獣が危機に瀕した際には、自らの身を挺して外敵や乱暴な若いオスから守り抜いた。恐怖ではなく「安心感」によって他個体を惹きつけるその姿勢は、群れの安定に劇的な効果をもたらし、結果としてメスたちからの絶大な支持を取り付けることにつながった。