ラガービールとは?エールとの決定的な違いと下面発酵の秘密を徹底検証

ラガービールとは?エールとの決定的な違いと下面発酵の秘密を徹底検証

ラガービールとは?エールとの決定的な違いと下面発酵の秘密を徹底検証に関する知りたいポイントを初心者にも親しみやすくまとめました。詳細を読もうことができます。

ビールを体系的に理解するための第一歩は、その製法による大分類を知ることにあります。世界に存在する100種類以上のビアスタイルは、酵母の性質と発酵方法によって、大きく「上面発酵(エール)」「下面発酵(ラガー)」「自然発酵」の3系統に分かれます。このうち世界市場の約9割、日本国内市場においては98%以上を占めているのがラガービールです。

「ラガー(Lager)」という言葉のルーツは、ドイツ語の動詞「lagern(貯蔵する、保管する)」に由来します。中世ヨーロッパのバイエルン地方において、気温が上がり雑菌が繁殖しやすい夏場を避け、冬の間に氷の張った冷涼な洞窟や地下室にビール樽を「貯蔵」し、ゆっくりと寝かせたことが始まりでした。日本の法的基準である「ビールの表示に関する公正競争規約及び施行規則」第4条においても、ラガービールは「貯蔵工程で熟成させたビール」と明確に規定されています。

では、専門用語として頻繁に比較される「エール」とラガーの決定的な違いはどこにあるのでしょうか。その核心は、使用する酵母の種類と発酵温度のコントロールに集約されます。

エールビールに用いられるのは「上面発酵酵母(Saccharomyces cerevisiae)」です。人間の生活温度に近い15〜25℃の常温域で活発に活動し、発酵の最終段階で酵母が麦汁の表面に浮かび上がって層を形成します。この高温発酵によって、バナナやリンゴ、洋梨などを思わせるフルーティーな「エステル香」やスパイシーな香気成分が豊富に生成され、濃厚で重厚なコクが生まれます。代表格にはペールエール、IPA、スタウト、ヴァイツェンなどがあります。

対照的に、ラガービールを司るのは「下面発酵酵母(Saccharomyces pastorianus)」です。この酵母は寒冷な環境に適応した特殊な種であり、発酵が進むとタンクの底へと沈降していく性質を持ちます。5〜10℃という過酷な低温下で、いわば仮死状態に近い極限の静寂を保ちながら糖分をアルコールと炭酸ガスへと分解していきます。この低温環境こそが、エステル香などの副産物の発生を徹底的に抑え込み、麦汁由来の清らかな旨味とホップ本来の引き締まった苦味だけを純粋に際立たせるのです。

前田 葵
著者

前田 葵

マーケティングと消費者心理のトレンドを分析し、現代のヒット商品の背景を読み解きます。