昆虫が幼虫から成虫へと姿を変えるプロセスの中でも、カブトムシが属する甲虫類の「完全変態の仕組み」は生命科学における奇跡の一つといえます。バッタやセミのように幼虫がそのまま成虫の形に近づく不完全変態とは異なり、カブトムシは幼虫と成虫で形態も食性も全く異なります。
幼虫は蛹になる直前、餌を食べるのをやめて体内の排泄物をすべて出し切り、体色が白から黄色味を帯びたシワシワの状態になります。この期間を「前蛹(ぜんよう)」と呼び、期間は約7〜10日間続きます。この時、幼虫の体内では驚くべき現象が起きています。幼虫時代の筋肉や消化器官などの組織が自己融解酵素によって一度ドロドロのスープ状に分解され、「成虫原基(イマジナル・ディスク)」と呼ばれる未分化の細胞群を元に、脚、複眼、触角、そしてオス特有の巨大な角が一から再構築されるのです。
カブトムシの蛹化と羽化の時期は地域や温度によって前後しますが、一般的に蛹化は5月下旬から6月、蛹の期間(約3〜4週間)を経て、6月下旬から7月中旬に羽化を迎えます。蛹の殻を脱ぎ捨てたばかりの成虫は、上翅(じょうし)が透き通るような純白で、体組織も極めて柔らかい状態です。数日かけて空気に触れながらキチン質が硬化し、深い赤褐色から漆黒の強固な鎧へと変化していきます。