あの日、東京はまだ冷たい雨が降っていた。1997年3月19日、渋谷区円山町のアパートで、39歳の女性の遺体が発見された。彼女こそが、東京電力で経済調査室副長を務めていたエリート社員である。現場はラブホテルが立ち並ぶ混沌としたエリア。昼間の彼女の肩書と、夜の彼女の「仕事」のギャップは、瞬く間に日本中の好奇の目を引きつけることとなった。
警察の捜査は難航を極めた。現場に残された物証は少なく、関係者の証言も錯綜する。何より、彼女がなぜ毎夜、渋谷の街に立ち続けたのかという動機について、世間は勝手な解釈を重ねていった。悲劇はここから加速していく。