本作の魅力は、何と言っても「一方通行の連鎖」が生み出す圧倒的なリアリティにある。主人公の光(ひかり)が憧れるのは、クラスの人気者である大谷(おおたに)。しかし、大谷の視線の先にいるのは、光の親友である美少女・麻里(まり)だ。そして、その麻里が密かに想いを寄せるのは、クールな朝霧(あさぎり)という、見事なまでのすれ違いが描かれる。
誰もが「自分ではない誰か」を見つめている。この構図が、読者自身の過去の失恋や、言えなかった言葉の記憶を呼び覚ます。もりの中先生の繊細な筆致は、キャラクターたちの微細な表情の変化や、言葉の裏に隠された本音を容赦なく描き出す。読者はただの観客ではいられず、4人の誰かに自分を投影してしまうのだ。