千日回峰行に挑む僧侶は、常に一振りの短刀と、首を吊るための紐(死出の紐)、そしてあの世への旅費とされる六文銭を身につけている。これらはファッションでも象徴でもない。もし途中で修行を続けられなくなった場合、その場で自ら命を絶つという掟の証明だ。
「今日は体調が悪いから休む」ということは絶対に許されない。台風の日も、高熱で意識が朦朧とする日も、ただ一歩を踏み出さなければならない。この絶対的なルールが、修行者の精神を極限まで追い詰める。退路を完全に断たれたとき、人間の脳は生存のための超常的なエネルギーを解放する。日常の「甘え」や「言い訳」が一切通用しない世界。そこにあるのは、生か死かという究極の二者択一だけだ。