年末の放送直後、SNS上で必ず巻き起こるのが「なぜ年間ストリーミング1位のあのアーティストではなく、この曲が大賞なのか」という疑問の声です。この違和感を解き明かす鍵は、日本レコード大賞の規約に定められた選考基準の文言と審査委員会の特殊な構成にあります。
日本作曲家協会が定めた大賞の制定基準には、以下のような規定が存在します。
「対象年度に発売されたすべての邦楽作品の中で、芸術性、独創性、企画性が顕著であり、優れた歌唱によって活かされた作品で、大衆の強い支持を得、その年度を代表すると認められた作品に贈る」
ここで極めて重要なのが、日本レコード大賞は「単なる売上枚数やストリーミング再生回数のランキング上位を表彰する制度ではない」という点です。審査は、日本作曲家協会の役員をはじめ、大手一般紙やスポーツ紙の音楽担当記者、TBS系列の音楽プロデューサーらで構成される約数十名の審査委員による合議・投票によって決定されます。この記者投票と業界役員の意向が複雑に交錯する構造こそが、数字だけでは測れない「業界評価」を生み出す土台となっています。
過去には週刊誌報道などによって、芸能プロダクションやレコード会社による激しい多数派工作や「買収疑惑」が報じられ、社会的な議論を呼んだ局面もありました。2010年代半ばに大手芸能プロとレコード会社をめぐる巨額の金銭授受疑惑が取り沙汰された際、視聴者の信頼は大きく失墜し、「出来レースではないか」という不信感がネット上で爆発的に拡散した経緯があります。こうした批判を受け、日本作曲家協会は審査員の世代交代や選考プロセスの見直しを迫られることになりました。