伊賀を語る上で欠かせないもう一人の巨人が、俳聖・松尾芭蕉だ。「古池や蛙飛びこむ水の音」で知られる芭蕉は、この伊賀の地で生を受けた。武士の身分を捨て、風雅の道を極めるべく全国を行脚した芭蕉の精神的バックボーンには、伊賀の風土が色濃く影を落としている。
彼が生まれ育った生家や、思索に耽ったとされる草庵「無名庵」跡を巡る散策は、忍者の動的な魅力とは対照的な、深い静寂の世界へと旅人を誘う。城下町の辻々には芭蕉の句碑がさりげなく佇み、地元の人々が手入れする庭先には季節の花が咲き誇る。文字通りの「侘び寂び」が息づく街並みを歩けば、研ぎ澄まされた言葉が生まれた背景が身体感覚として理解できるはずだ。