デザイン以前に最も致命的な過ちとなりやすいのが、刻む言葉の選択だ。自動翻訳ツールに頼った外国語の直訳は、ネイティブスピーカーから見れば失笑を買う不自然な表現になりかねない。
特に「Memento Mori(死を想え)」や「Amor Fati(運命を愛せ)」といったラテン語の格言、あるいは英語の引用句を選ぶ際は、単語単体の意味だけでなく、その言葉が生まれた文化的・文脈的背景まで調べ尽くす覚悟が求められる。文法的な誤りがないか、多面的な解釈で意図しない意味に取られないか、入念なクロスチェックが不可欠だ。
クリストファー・ノーラン監督の映画『メメント(Memento)』では、記憶を失い続ける主人公が真実を忘れないために自らの肉体へ事実を彫り込んでいく。映画が描くように、身体に刻まれた文字は自己を規定する強烈な錨となる。一時の感情の高ぶりや他人の言葉ではなく、10年後の自分が鏡で見ても恥じない芯のあるフレーズを選ぶべきだ。