山種美術館の最大の礎となっているのが、山種証券(現・SMBC日興証券)の創業者である山崎種二(1893–1983)が私財を投じて築き上げた約1,800点に及ぶコレクションです。種二は「美術品は個人の秘宝として独占するのではなく、広く世の人々と共有して楽しむべきだ」という確固たる信念を抱き、1966年に日本初の日本画専門美術館を開館させました。
種二の蒐集の特徴は、単に金銭的な価値や世間の評判に頼るのではなく、作家本人と深く交わり、その人柄と才能に心底惚れ込んで作品を直接求め続けた点にあります。日本画壇の巨匠たちとの温かな交流から生まれたコレクションは、作品単体の美しさを超えて画家の魂の軌跡を伝えています。
中でも特筆すべきは、天才画家・速水御舟のコレクションです。山種美術館は、御舟の代表作であり国の重要文化財に指定されている《炎舞》や《名樹散花》をはじめ、初期から晩年に至る主要作120点余りを一括所蔵しています。暗闇の中に立ち上る炎と蛾の乱舞を冷徹かつ幻想的に描いた《炎舞》の前に立つと、緻密な筆致と神秘的な色彩の深淵に引き込まれます。
さらに、近代日本画の巨匠・横山大観の気迫あふれる《心神》、雄大な富士を描いた名作群、そして種二が親交を結び生涯にわたって支援した奥村土牛の《城》《醍醐》など、日本の美意識の結晶とも呼ぶべき作品が惜しみなく収蔵されています。