食文化と発酵学の第一人者である小泉武夫東京農業大学名誉教授は、長年にわたり日本の伝統食と現代人の体質について知見を発信してきた。小泉氏の研究によれば、何千年もかけて味噌や醤油、漬物、納豆といった植物性発酵食品を中心に腸内環境を形成してきた日本人の身体にとって、高脂質・高動物性タンパク質の乳製品は歴史的に極めて新しい食材であるという。
欧米の酪農地帯で育まれた民族は、数千年以上にわたる突発的な遺伝子変異によって大人になってもラクターゼの分泌が止まらない「乳糖持続性」を獲得した。しかし、米と魚介類、野菜を主食としてきた日本人の大半はその変異を持たない。伝統的な和食が維持してきた健全な消化リズムに対し、戦後の急速な西洋化によって導入された牛乳習慣がミスマッチを起こしていると小泉氏は警鐘を鳴らす。