山谷が宿場町として発展したルーツは江戸時代にまで遡ります。日光街道の初宿である千住宿の手前に位置し、木賃宿が集まっていた場所でした。戦後の復興期から高度経済成長期にかけて、日本全国から建設現場などの日雇い労働者が集結し、最盛期には1万5,000人以上がこの狭いエリアにひしめき合っていました。
「ドヤ」とは、「人が住むような場所ではない(宿の逆読み)」という自嘲的な意味合いから生まれた隠語です。狭小な簡易宿泊所が軒を連ね、日払い賃金を元手に酒を酌み交わす労働者たちで酒場やパチンコ店は深夜まで活気に満ちていました。漫画『あしたのジョー』で主人公の矢吹丈と丹下段平が出会った舞台「泪橋」は、まさに当時の山谷のエネルギーと哀愁を象徴するアイコンとして今も広く知られています。