世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部として登録されて以来、海外からのハイカーやディープなトラベラーの姿も目立つようになった。しかし、京都や金沢のような観光地の喧騒はここには存在しない。みんなどこか静かに、自分自身の内面と向き合うような足取りで境内を歩いている。
現代社会は情報と騒音に満ちあふれている。SNSの通知や都市の雑踏から離れ、携帯電話をポケットに仕舞い込み、ただ岩肌を見上げる時間。参拝者のひとりは「ここに来ると、自分の頭の中のノイズがすっと消えていく」と語った。ただ観光地を「見る」のではなく、その土地の静けさを「体験する」。熊野の豊かな森と海が交錯するこの場所は、現代人が無意識に追い求めていた完璧なデジタルデトックスの聖地となっているのだ。