かつて抗争の引き金となったのはテリトリーの奪い合いだった。だが、現代の暗黒街を動かす動機は極めて冷酷な経済合理性だ。特に六代目山口組をはじめとする主要組織は、厳しい暴対法の施行に伴い、表面上の暴力行為を徹底的に封印。代わって浮上したのが、暗号資産の洗浄や海外脱税ルートの構築、さらには実業への不正参入である。
長年、地下社会を取材してきたジャーナリストは語る。「もはや組員が背中に彫り物を見せて脅す時代ではない。スーツを着たアナリストや弁護士が、裏社会のブレインとして億単位の資金を動かしているのだ」。暴対法という法制度の壁が厚くなるほど、組織はより高度で透明性の低い地下経済へと沈潜していく。表向きは静まり返っているように見える街の裏側で、暗黒街の資金力はむしろ精緻化している。