ウェブやSNS上には美しい絶景写真ばかりが拡散されるため、現地の実態を知らないビジターによるトラブルが深刻化しています。編集部が現地調査と関係機関へのヒアリングで浮き彫りにした「3大盲点」を明確にしておきます。
誤解1:「遊歩道」という名前に騙されたスニーカーでの入山
行政のパンフレット等には「遊歩道整備」と記載されていますが、これは都市公園のような舗装路を意味しません。中ノ又渓谷沿いは粘土質の土、濡れた花崗岩、滑りやすい木の根が剥き出しになった山岳登山道です。普通のスニーカーやヒール、サンダルで進入した観光客が転倒して足首を捻挫し、救助要請が出された事例も発生しています。グリップ力の高いトレッキングシューズ、両手を空けるザック、雨具(レインウェア)の携行は最低限のマナーです。
誤解2:本州屈指のツキノワグマ高密度生息地である事実
安の滝が位置する北秋田市阿仁地区は、古くから狩猟採集の歴史を紡いできた「阿仁マタギ」の発祥地であり、原生林には極めて高密度でツキノワグマが生息しています。近年の気候変動による堅果類(ブナ・ミズナラの実)の凶作年には、遊歩道沿いや駐車場付近での目撃情報が激増します。
「滝の轟音にかき消され、お互いの気配に気づかず至近距離でバッタリ遭遇する」のが滝巡りにおける最大の危険パターンです。単独行を避け、常に音を鳴らす熊鈴やラジオを鳴らし続けること、そして万一の至近距離遭遇に備えたクマ撃退スプレー(カウンターアソールト等)を即座に抜ける位置に装備することが命を守る防壁となります。薄明薄暮時(早朝・夕暮れ)の行動は厳禁です。
誤解3:絶景の空中撮影におけるドローン規制のハードル
「滝壺から上空へ抜けるドローン映像を撮りたい」と考えるクリエイターが増加していますが、無許可の飛行は違法行為となります。安の滝周辺は国有林野内に位置しており、ドローンを飛行させる場合は事前に林野庁(東北森林管理局米代東部森林管理署)へ「入林届」を提出しなければなりません。さらに、鳥獣保護区や文化財指定区域、他のハイカーのプライバシー・安全確保のための離隔距離(30メートル以上)を遵守する必要があります。無届の無人航空機飛行は処罰の対象となるだけでなく、遭難捜索時のヘリコプター運航を妨害する危険性があることを肝に銘じてください。