未解決事件の現場で最も過酷な現実に直面しているのは、他でもない被害者遺族です。「時間が解決してくれる」という世間の言説とは裏腹に、犯人が捕まらない限り、遺族の時計の針は事件当時の瞬間に固定されたまま動きません。
世田谷一家殺害事件で姉家族4人を奪われた入江杏さんは、これまでの自著や追悼集会において、次のような痛切な思いを吐露しています。
「事件から何年経とうと、悲しみが薄れることはありません。最も恐ろしいのは、世間から忘れ去られ、事件がなかったかのように扱われる風化です。生きている限り、問い続けなければならない」
警視庁特命捜査対策室(いわゆるコールドケース担当部署)に所属していた元捜査幹部の回顧録によると、捜査員の間でも「迷宮入りを自分の代で終わらせる」という凄まじい気迫と、歳月の壁に対する焦燥が常に交錯しています。事件発生から20年以上が経過すると、事件当時の捜査資料に目を通したベテラン捜査員が相次いで定年退職し、捜査引き継ぎの過程で現場の微細な空気感や直感が抜け落ちるリスクが指摘されています。
一方で、SNSや動画共有サイトの普及によって生じた歪みも見過ごせません。ネット掲示板やYouTubeでは「未解決事件 考察」と題し、確固たる根拠のないデマや近隣住民・遺族に対する心ない誹謗中傷が面白半分に拡散されるケースが頻発しています。遺族取材を行うジャーナリストからは、「ネット上の無責任な憶測や犯人視によって、二次被害に苦しめられている遺族が少なくない」という告発が相次いでおり、市民側の節度ある情報提供姿勢が厳しく問われています。