1990年代後半、メディア嫌いで知られた伝説の男が突如としてフジテレビの深夜番組『LOVE LOVE あいしてる』のレギュラーとして姿を現したとき、世間は二度驚かされた。隣にいたのは、当時まだデビュー前後の初々しさを残していたKinKi Kidsのふたりだった。
拓郎は少年たちにギターの手ほどきをし、音楽の根源的な楽しさを教え込んだ。番組内で結成されたバックバンドは、大御所ミュージシャンたちが純粋にセッションを楽しむ贅沢な実験場となり、カラオケ音源に頼り切っていた当時のテレビ音楽番組に生演奏のダイナミズムを取り戻させた。
KinKi Kidsに提供した『全部だきしめて』は世代の壁を軽々と飛び越え、彼らを国民的デュオへと押し上げる起爆剤となる。親子ほど年の離れた若者と対等に向き合い、ユーモアを交えながら自らの音楽的DNAを授けていく姿は、頑固なフォークの神様というパブリックイメージを心地よく裏切るものだった。