日産自動車は1933年(昭和8年)に横浜市神奈川区宝町で創業した歴史を持ちます。その後、1968年に本社機能を東京・銀座へ移転しましたが、創業の地である横浜への深いアイデンティティは失われていませんでした。そして創業75周年の節目を迎えた2009年8月、本社機能を再び横浜へと戻す「グローバル本社移転」が決行されたのです。
この大規模な移転劇の背景には、経営効率の最適化だけでなく、横浜市が推進していた「みなとみらい21地区」の開発戦略との強固なアライアンスがありました。環境性能とデザイン性を極限まで追求した地上22階建ての本社ビルは、省エネ構造や自然採光を取り入れたサステナブル建築の先駆けです。当時の経営陣が掲げた「開かれた日産」という理念を具現化すべく、低層階を一般市民や観光客に広く開放する構造が採用されました。
横浜駅とみなとみらい地区を結ぶ歩行者幹線通路「NISSANウォーク」を建物内に貫通させたことは、都市計画の観点からも極めて革新的な試みでした。1日あたり数万人もの歩行者がビル内を行き交う日常動線そのものをプロモーションの場へと昇華させ、企業と生活者の心理的距離を劇的に縮めることに成功した好例として、現在も都市開発業界で高く評価されています。