かつて昭和から平成初期にかけて、植物油に含まれるリノール酸は「動物性脂肪(飽和脂肪酸)に代わるヘルシーな油」として広く推奨されてきました。実際、生化学的な事実として悪玉コレステロールとリノール酸の関係を紐解くと、血中のLDLコレステロール値を降下させる確かな作用が認められています。しかし、この単一のメリットのみを強調した結果、現代人の食卓には深刻な歪みが生じることになりました。
ネット上で「リノール酸は体に悪い」「摂取を控えるべき毒」とまで叫ばれる背景には、リノール酸のアレルギー・炎症への影響が解明された経緯があります。リノール酸は体内に取り込まれると、代謝プロセスを経て「アラキドン酸」へと変換されます。このアラキドン酸から生成される生理活性物質(エイコサノイド)には、強い炎症促進作用や血管収縮作用、血小板凝集作用を持つものが多く含まれているのです。
体が外敵と戦うための正常な免疫反応として炎症は不可欠ですが、過剰なアラキドン酸の蓄積は、アトピー性皮膚炎、花粉症、喘息といったアレルギー性疾患の過敏な悪化を招きます。さらに、動脈硬化やがんのリスクを高める「くすぶり型の慢性炎症」を引き起こす引き金になり得ることが、医学界で問題視される決定打となりました。