芥川賞を揺るがした怪物の血脈!中上健次が放つ路地の文学的衝撃

芥川賞を揺るがした怪物の血脈!中上健次が放つ路地の文学的衝撃

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中上文学を語る上で欠かせないのが、熊野の鬱蒼とした森と太平洋の黒潮に抱かれた地で紡がれた「紀州サーガ」の存在だ。『岬』『枯木灘』、そして完結編である『地の果て 至上の時』へと続く三部作は、近代合理主義が排除してきた土地の霊性や差別構造を、極彩色の神話へと反転させた。

彼の文体は、まるでジャズのフリーインプロビゼーションのように疾走する。短文の連打と重層的なポリフォニーが、読む者の身体感覚を直撃する。文字を追っているはずが、熊野の湿り気や木々の擦れ合う音、立ち上る血の匂いを皮膚で感知させられるのだ。

物語の中で反復される親殺しのモチーフや濃密な近親相姦的エロスは、道徳的タブーを挑発するためだけのものではない。自らの存在根拠を徹底的に突き詰め、生きることの根源的な痛みを引き受けるための、命がけの闘争であった。

池田 達也
著者

池田 達也

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。