多くのファンが記憶しているこのフレーズですが、具体的に「何話の描写なのか」を精査すると、原作コミックスとテレビアニメ版の間に興味深い演出の差異が存在します。原作漫画における初出は、まさに記念すべき第1話「ROMANCE DAWN —冒険の夜明け—」の冒頭です。処刑台に登ったロジャーに対し、広場の群衆のひとりが「海賊王!! お前の集めた財宝はどこへやったんだ!?」と叫んだのを受け、死刑執行の刃が迫る刹那に放たれました。
一方、社会現象的な認知度を確立させたのは、1999年に放送を開始したテレビアニメ版の初代オープニング『ウィーアー!』です。声優の大場真人氏による重厚なナレーション「富・名声・力。この世のすべてを手に入れた男、海賊王ゴールド・ロジャー……」に続き、名優・大塚周夫氏が演じるロジャーの野太く豪快な声で「俺の財宝か?欲しけりゃくれてやる、探せ! この世の全てをそこに置いてきた!」と叫ばれる演出は、日本中の視聴者の冒険心を鷲掴みにしました。
さらに原作第0話(映画『STRONG WORLD』連動エピソード)や第967話「ロジャーの冒険」では、ローグタウンの処刑台に向かうロジャーの足取りや、処刑直前の不敵な表情がより精緻に補完されています。世界政府側は彼を処刑することで海賊たちへの見せしめとし、反抗の芽を摘む構想を描いていました。しかし、ロジャーが放ったわずか数秒のゴール・D・ロジャー 処刑台のセリフによって、処刑場は一瞬にして「大海賊時代の開会式」へと塗り替えられたのです。
なお、海外のファンコミュニティにおけるこの世の全てをそこに置いてきた 英語表記としては、北米版アニメなどで採用された「I left everything I gathered together in one place」や、原作英訳版の「I left it all in that place! / I left everything this world has to offer there!」などが広く知られています。「gathered together(かき集めたもの)」と「everything this world has to offer(この世がもたらす全ての事物)」というニュアンスの違いは、海外の読者の間でも「単なる物財か、それ以上の概念か」を巡る白熱した議論の種となってきました。