『Doo Wop (That Thing)』が画期的だった最大の要因は、古き良きドゥーワップ/モータウン・ソウルの生々しいボーカルハーモニーと、1990年代後半の重厚なヒップホップ・ブーンバップビートを完全にシームレスな形で共存させた点にあります。
本作のバックトラックでは、1971年にリリースされたThe 5th Dimension(フィフス・ディメンション)の楽曲『Together Let's Find Love』のライブ音源からイントロのドラムブレイクやピアノリフの質感が巧みにサンプリング・再解釈されています。さらに、1960年代のモータウンやスタックス・レコードのレコードから直接立ち上ってくるかのようなホーンセクションと、ローリン自身の多重録音による分厚いアカペラコーラスが幾重にも重なります。
サンプリングだけに頼るのではなく、生楽器のダイナミズムを大胆に取り入れたローリンの手腕は、当時のヒップホップ/R&Bプロデュースの常識を覆しました。ラッパーとしてのタイトで歯切れの良いデリバリーと、ソウルシンガーとしての豊かな表現力を1曲の中で一人二役のように完璧にこなすスタイルは、後続のアーティストたちに決定的な指針を示しました。