「髭男爵」の代名詞である貴族キャラ。その誕生は、実は崖っぷちの状況下における苦肉の策だった。山田ルイ53世とひぐちくんのふたりが結成初期に直面していたのは、オーディションにすら通らない過酷な日常だ。幾度となくネタを試行錯誤する中で、ひぐちくんの独特な存在感と山田ルイ53世の重厚な声を生かすスタイルとして浮上したのが、ナポレオン風の衣装を着た「貴族漫才」という突飛なアイデアだった。
本物のワイングラスではなく、100円ショップで購入したプラスチック製のグラスを鳴らすカチンという音。それがテレビ画面越しにシュールな笑いを呼び起こした。お笑い界に旋風を巻き起こしたスタイルの裏には、徹底的に計算された「引き算の美学」が存在していたのだ。