時代が昭和へと下ると、近衛家は再び日本の運命を左右する巨大な旋風の中心に立つ。それが第34・38・39代内閣総理大臣を務めた近衛文麿である。公爵にして五摂家筆頭という圧倒的な家柄、容姿端麗な風貌、そして革新的な言動は、当時の国民から絶大な人気を集めた。
日本政治史において、彼ほど評価が分かれ、同時に悲劇的な影を落とした政治家も珍しい。日中戦争の長期化、日米開戦へと至る外交の混迷、国家総動員体制の構築。昭和初期の国家的危機において、彼が下した一連の決断は、日本の進路を決定づけた。貴族的な超然さと政治的葛藤の間で揺れ動いた文麿の苦悩は、昭和史最大のミステリーとして今も議論が尽きない。