三谷大河が多くのファンを熱狂させる背景には、計算し尽くされた独自の作劇手法が存在します。他の脚本家と一線を画す主な特徴は以下の3点に集約されます。
1. 緻密な伏線回収と構成の妙
第1話で何気なく交わされた登場人物のセリフや小道具の扱いが、終盤の重要な局面で運命を分ける伏線として機能する設計は三谷脚本の真骨頂です。『鎌倉殿の13人』において、序盤のコミカルな掛け合いが後半の凄惨な権力闘争の引き金へ反転していくカタルシスは、年間を通じて視聴する大河ドラマならではの醍醐味といえます。
2. 名もなき登場人物にも光を当てる多面的な群像劇
主人公ひとりを絶対的な英雄として描くのではなく、周囲を取り巻く家臣、敵対勢力、名もなき民衆に至るまで、それぞれに譲れない正義や哀愁を持たせます。たとえば『真田丸』における室賀正武(西村雅彦)の「黙れ小童!」という名言が象徴するように、脇役の一挙手一投足に強烈な人間味が宿ります。
3. 三谷組と呼ばれる常連俳優の起用と新境地の開拓
山本耕史、大泉洋、佐藤浩市、梶原善、浅野和之といった「三谷大河の常連キャスト」が脇を固めつつ、主演俳優にはこれまでにない過酷な心理的葛藤を演じさせます。『鎌倉殿の13人』で純朴な青年から冷酷な権力者へと変貌を遂げた北条義時(小栗旬)の演技は、その代表例です。